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第16課 終末とその前兆


 20世紀の幕が開かれたとき、人々は希望をもって明るい将来をのぞみました。今4分の3世紀を終わってふりかえってみると、2つの世界大戦を含むこの期間は人類の暗い歴史でした。そして将来も明るくはありません。人口、食糧、資源、エネルギー等困難な問題をかかえこんで世界の終末ということを考える人が多くなってきました。ある人々は今世紀の終わりころ非常に大きな危機にみまわれるだろうと考えています。
 聖書は罪の世界がいつまでも続くものではないと教えていますが、いつ終末がくるかという正確な時期については、明らかにされていません。もし何年何月何日ということがわかっていたら、ある人々はその日の直前まで勝手な生活をして、時がきたらまじめな生活にはいろうと思うかも知れません。しかし私たちはいつ自分の生命の終わりがくるかわかりません。また、急に悪の道からぬけ出すこともできないでしょう。ある人々は時が近づくにつれて生活も落ちつかず、浮き足立ってしまうおそれがあります。正確な時は示されていませんが、その時が近づいていることを示す前兆は聖書の中に明らかにされています。


1.聖書の終末論

 1970年代になって一般に終末論に関心がもたれはじめたのは、核兵器の充実に伴う国際不安、有限な地球における人口の爆発的な増加、食料危機、資源の欠乏等のことに気がついて、人類滅亡の可能性を感じるようになったからです。このような終末論には希望がありません。
 人間が神の律法に従わなかったため、この世界は全くゆきづまると聖書は述べています。ルカによる福音書21章25、26節に、「そして、地上では、諸国民が悩み、海と大波とのとどろきにおじ惑い、人々は世界に起ろうとする事を思い、恐怖と不安で気絶するであろう」とあります。ここに「おじ惑い」と訳してある原語はアポリヤで、これは窮境、すなわち袋小路に追いつめられた状態をあらわす言葉です。罪を犯している人類は全く追いつめられて、解決を見いだすことができない絶望的な状態になってしまいます。しかし聖書はその絶望状態をこえて希望のある道を示しているのです。神に従っていた者に救済が与えられ、それは更によい世界への出発点となるのです。終わりの事件については第7課で研究しますが、そのときキリストが再臨なさって、神に従っていた人々と新しい、永遠につづく神の国にうつして下さいます。聖書の終末論は、私たちにすばらしい希望を与えています。終末は救われる人々にとっては、大きな喜びの日です。イザヤ書25章9節に、「その日、人は言う、『見よ、これはわれわれの神である。わたしたちは彼を待ち望んだ。彼はわたしたちを救われる。これは主である。わたしたちは彼を待ち望んだ。わたしたちはその救を喜び楽しもう』」とあります。


2.終末の前兆

 終末がいつ起こるかについて、聖書の中に多くの前兆が示されています。これをその性質から2つにわけて考えてみたいと思います。
その1つは、信号あるいは標識のような前兆です。たとえば高速道路を通って東京に行くとき、道路標識があって、東京何キロと示しています。それと同じように終末の前兆として神がお与えになる出来事が聖書に書いてあります。その出来事をみて、終末が近づいたことを知ることができます。これは主として自然界にあらわれるしるしです。
もう1つの前兆は、ただ終末が近いことを知らせるだけでなく、それ自身が終末をもたらす働きをするもので、これは聖書を信じない人でも納得できる前兆です。

(1)信号としての前兆(自然界のしるし)
 イ 暗黒日
 イエスは「しかし、その時に起る患難の後、たちまち日は暗くなり、月はその光を放つことをやめ」(マタイによる福音書24章29節)といわれました。「その時に起る患難」というのは、この章のはじめから研究してくると明らかなように、中世紀において真に聖書を信じるクリスチャンに対して加えられた圧迫、迫害を意味するものです。
 しかしこの預言された期間は「縮められる」(マタイによる福音書24章22節)とキリストはいわれましたが、実際に迫害がやんだのは18世紀の半ばすぎでした。これはルターによる宗教改革の結果です。
 1780年5月19日に、アメリカ合衆国ニューイングランド地方を中心として特異な現象が起こりました。事実の記録としてウェブスター辞典1883年版1604ページ、「暗黒日」の項に、「ある場所では人々は戸外で数時間、普通の印刷物を読むことができなかった。鳥はタベの歌をうたい、姿をかくし、静かになった。鶏はとやにはいり、家畜はなやのまわりの庭に集まり、家々にはひがともされた。暗黒は午前10時ごろからはじまった。・・・この著しい現象の真の原因は知られていない」とあります。天文学者カーシェルは、「北米における暗黒日は、常に興味をもって読まれる驚くべき自然の現象の1つであるが、その原理は説明ができない」といいました。この暗黒が日食によるものでなかったことは暗くなった時間や、その前の晩が満月であったことから明らかです。
 その夜はやはり暗黒でした。月食は満月の時にしか起こりませんから、これはやはり普通の天体の現象ではなかったことがわかります。

口 落星
 暗黒日の後に、再臨の前兆として起こる現象についてキリストは、「星は空から落ち」(マタイによる福音書24章29節)といわれました。
 1833年11月13日に、いまだかつて人間が見たことのない著しい流星雨が北アメリカの東部でみられました。大英百科辞典によると、夜半から暁にかけて、1つの場所で20万以上の流星が見られたのです。
 エール大学のオルムステッド教授は、ザ・メカニズム・オブ・へブンズの中に次のように記しています。
「国内の雑誌にあらわれたすべての記事、および私の研究仲間や私自身にああてられたおびただしい手紙を総合すると、この現象に関する主な事実は次のようなものである。
 この流星雨は、ほとんど北米大陸全部にみられたもので、北は英領から、南は西インド諸島およびメキシコに至り、東はアフリカ海岸の東、経度61度、西は太平洋におよんでいる。この広大な地域における流星の出現時間は、ほぼ同じであった。9時から12時までの間、この流星は、数が多いことと、明るさの著しいことで人々の注意をひきはじめ、午前2時から5時までの間が最盛期であった。多くの場所では午前4時ごろが最も多く、太陽の光でみえなくなるまで継続したのである。」
 この流星雨の輻射点は、しし座のガンマ星附近にあったので、これをしし座の流星群とよんでいます。ある人々は「しし座の流星雨は33年ごとに降るのだから、再臨の前兆ではない」といいましたが、その後の研究によって、もう今後は預言のように著しくは降らないことがわかりました。有史以来最大の流星雨である1833年のしし座の流星雨は正しく再臨の前兆です。

(2)終末をもたらす前兆
 イ 科学技術の進歩
 ダニエル書12章4節「あなたは終りの時までこの言葉を秘し、この書を封じておきなさい。多くの者は、あちこちと探り調べ、そして知識が増すでしょう」と預言されています。終末時代になると「知識が増す」というのです。19世紀になって聖書に関する知識も増しました。しかしいちばん著しい知識の増加は科学技術の分野です。その増加は今日に至るまでそのスピードを増しつづけています。
 米国のケネディ大統領が1963年に発表した教育白書は、「過去20年間に得られた科学的情報量は、それ以前の人間の歴史の中で得られた量より多く、またこの世界のはじめから科学者とよばれた人々の90パーセントは現存している」とのべています。
 有名な歴史家アーノルド・トインビーは「人間の知識がほとんど頂点に達したことは、歴史上における現代の非常に大きな特徴である」といいました。
 しかし知識が増したことによって人間は幸福になったかというと、必ずしもそうではありません。原子エネルギーの秘密をにぎった人間は、全人類を滅亡させるに十分な核兵器をもつことになりました。宇宙開発の技術は、大陸間弾道弾の誤差を200メートルにしたといわれます。世界は縮小され、次の世界戦争は全人類を滅亡におとしいれることが予想されるのです。
 科学技術を支える倫理、良識を失えば、この世界はおそるべき危険に直面するところにきています。

口 国家間の紛争
 キリストは「戦争と戦争のうわさとを聞くであろう。注意していなさい、あわててはいけない。それは起らねばならないが、まだ終りではない。民は民に、国は国に敵対して立ち上がるであろう」(マタイによる福音書24章6節、7節)といわれました。ふりかえってみると人類の歴史は戦争の歴史でした。
 もとハーバード大学の社会学の教授であったピー・エー・ソロキン博士はかつて興味深い数字を発表しました。教授の研究によれば、過去2500年間に902回の戦争と、1615回の内乱が世界のどこかで起こったことがわかりました。そして20世紀になってから起こった戦争や内乱の数は、それ以前の八倍もあったとのことです。これからも戦争の数と規模とは、ますます増大して行くに違いありません。

ハ 世相の悪化
 キリストは「そして、ノアの時にあったように、人の子の時にも同様なことが起るであろう」(ルカによる福音書17章26節)といわれました。
 ノアの時のことについては、創世記6章にでています。その時の状態について11節「時に世は神の前に乱れて、暴虐が地に満ちた」とあります。暴力は今日世界の風潮となっています。アーサー・M・シュレージンガーは、米国について、「暴力犯罪の発生率は1940年から67年にかけて倍増した。犯罪統計ほどあいまいなものはないが、それでも30年前、何百万人もの失業者が国中にあふれた大不況のころでも安全に夜歩きできたことを思い出してほしい。今日の豊かなアメリカでは、夜歩きは危険になっている」と書いています。新聞に暴力事件が報道されない日はないといっても過言ではありません。
 創世記6章5節には「主は人の悪が地にはびこり、すべてその心に思いはかることが、いつも悪い事ばかりであるのを見られた」とあります。
 テモテへの第2の手紙3章1節から5節までに、「しかし、このことは知っておかねばならない。終りの時には、苦難の時代が来る。その時、人々は自分を愛する者、金を愛する者、大言壮語する者、高慢な者、神をそしる者、親に逆らう者、恩を知らぬ者、神聖を汚す者、無情な者、融和しない者、そしる者、無節制な者、粗暴な者、善を好まない者、裏切り者、乱暴者、高言をする者、神よりも快楽を愛する者、信心深い様子をしながらその実を捨てる者となるであろう」とありますが、今日の社会にこのような姿がみられることを否定する人はないでしょう。
 またノアの時に神の子たちは人の娘たちの美しいのを見て、自分の好む者を妻にめとった〔罪がこの世界にはいったあと、神に従ったセツの子孫を神の子、神に反逆したカインの子孫を人の子といっている=著者注〕」(創世記6章2節)「とあり、ただ欲望にしたがって行動している有様は、今日、性の解放を主張する一般の考えと共通しているものです。そのために男女の関係は混乱し、離婚の数も著しく増加しています。
 ノアの時代に人の悪が地に満ちて、洪水によって滅ぼされたように、今日の人類の悪に対して、神は審判を行なわれるのです。
 今日の最も深刻な危機は、このような重大な時が切迫しているにもかかわらず、これを意識していないで、その日その日を過ごしている私たちの心の中にあるのです。

ニ 宗教の世界
 さてもう1つ、宗教界についての預言が、マタイによる福音書24章14節にあります。「そしてこの御国の福音は、すべての民に対してあかしをするために、全世界に宣べ伝えられるであろう。そしてそれから最後が来るのである。」
 現在福音を伝える働きは、全世界にすすめられていますが、セブンスデー・アドベンチスト教会だけをみても、世界の227か国のうち、約200か国で伝道を進めています。これらの国の中に全世界の人口の98パーセント以上が住んでおり、彼らは福音に接する機会が与えられています。特にラジオやテレビ等をとおして、福音はあらゆる障壁をのりこえて、宣べつたえられているのです。この預言が成就する日もあまり先のことではないと思われます。

ホ 天災地変
 キリストは「ききんや地震がある」といわれましたが、今日の世界には異常気象や人口増加のためにききんが起こっています。また地震も増加の傾向です。海洋の底にあるプレートの運動は、地球がふるびて安定を失っているのかも知れません。預言者イザヤは「目をあげて天を見、また下なる地を見よ。・・・・地は衣のようにふるび」(イザヤ書51章6節)と言っています。〔プレートというのは海底にある厚さ70キロ程度の岩石層で、これが移動して大陸とおし合い、陸地の沈降、隆起をもたらすが、あるところまでいくとハネ返って大型地震が起こるという=著者注〕以上述べた前兆を総合して考えると、確かに終末は近づいていると思われます。


3.用意

 ここで私たちは何をすればよいのでしょうか。マタイによる福音書24章32、33、44節には「いちじくの木からこの譬を学びなさい。その枝が柔らかになり、葉が出るようになると、夏の近いことがわかる。そのように、すべてこれらのことを見たならば、人の子〔キリスト=著者注〕が戸口まで近づいていると知りなさい。・・・あなたがたも用意をしていなさい。思いがけない時に人の子が来るからである」とあり、キリストを迎えるために用意をしなさいといわれています。心の中から争いやねたみ等一切の罪をとり去って、神の前に正しいものとなることです。罪を悔い改め、神にたより、キリストを信じて生きていく時、神はこの用意を与えて下さいます。




第16課 復習問題


※問題をクリックすると解答が開きます。

答え: 何年何月とわかっていたら、その日の直前まで勝手な生活をして、時が来たらまじめな生活に入ろうと思うかもしれない。またある人は時が近づくにつれて生活も落ち着かず、浮足立ってしまう恐れがあり、ともに幸せな生き方ではないから

答え: 「そして、地上では、諸国民がみ、海と大波とのとどろきにおじ惑い、人々は世界に起ころうとすることを思い、恐怖不安で気絶するであろう」(ルカによる福音書21章25、26節)。

答え: 素晴らしい希望を与え、さらに良い世界への出発点となる

答え: (1)信号あるいは標識のような前兆、(2)それ自体が終末をもたらす働き

答え: 科学技術の進歩、国家間の紛争、世相悪化、宗教の世界、天災地変の続出

答え: 心の中から争いやねたみなど一切の罪を取り去って、神の前に正しいものとなること

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