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第21課 死者との交通


 死人には意識が全然ないこと、したがって死人は現世となんのかかわりもないことを前課で学びました。
 しかし多くの人が半信半疑ながらも祖先の霊をまつったり、神仏のたたりを気にしたりするのはなぜでしょうか。在来のしきたりや宗教が影響しているのは確かですが、そのほかに死後も霊魂が存在していると思わせるような、霊界の不思議な現象をみたり、体験を聞かされたりしたせいもあるのではないでしょうか。
 死人の霊との交通は未開の社会では広く行われ、わが国でも多くの迷信的な信仰のなかではみこ、口寄せなどを通して行われてきました。
 今日では心霊術という名のもとに、大々的に行われるようになり、霊媒をとおして死人の霊をよび出し、霊界の消息をきいたり、将来のことを予言したり、病気をなおしたりなど、いろいろ不思議なことをします。霊媒による手術が行われ、患部を摘出したという話もあります。またこっくりさんも盛んなようです。
 一体このようなことは何を意味するのでしょうか。心霊現象について聖書の光をあててみたいと思います。


1.死人の霊の正体

 前の課で学んだように、人は生命の息がでてゆけば、無意識の状態となり、「死者は何事をも知らない、…彼らはもはや日の下に行われるすべての事に、永久にかかわることがない」(伝道の書9章5、6節)と聖書は述べています。
 したがって死人の霊と自称するものが現われて、いかにも実在しているかのようにふるまい、不思議なことをするのは欺きです。終末時代におけるこのような不思議なしるしについて「これらは、しるしを行う悪霊(英訳悪魔)の霊であって」(ヨハネの黙示録16章14節)と書いてあります。悪魔については「偽り者であり、偽りの父」(ヨハネによる福音書8章44節)と書いてあります。
 悪魔には無数の部下があります。彼が神に反逆したとき、「悪魔とか、サタンとか呼ばれ、全世界を惑わす年を経たへびは、地に投げ落され、その使たちも、もろともに投げ落された」(ヨハネの黙示録12章9節)からです。ゆえに人が心霊術で故人そっくりの声やしぐさに接するのは、生前のすべてを知っている悪天使が故人をまねているにすぎません。決して死人の霊が現れるのではなく、悪魔の使いが出てくるのです。


2.悪魔のはたらき

(1)欺くこと
 悪魔はただ人を喜ばせたり慰めたり、または好奇心を満足させるために、不思議なことを行っているのではありません。故人の声色や趣味、習慣などを再現することによって、人の死後霊魂が存在していることを信じさせ、後には人間を破滅させるような指示を与えるようになるのです。
 エデンの園で、神は人が善悪を知る木の実をとって食べるならば「きっと死ぬであろう」と言われました。それに対してサタンは「決して死ぬことはないでしょう」と言いました。その時以来サタンは「決して死ぬことはない」と主張しつづけているのです。サタンは霊魂不滅説の元祖なのです。

(2)神の愛を疑わせる
 人は死んでも霊魂は永遠に不滅であるという考えは、早くから永遠地獄説となって現れました。すなわち人が死ぬと善人は天国や極楽に行き、悪人は地獄におちて永遠に苦しむというのです。これは愛の神を無慈悲な暴君のように思わせる誤った考えであって、このため多くのまじめな人々が失望して、懐疑論者や無神論者になってしまいました。

(3)善悪のけじめをあいまいにする
 人は死んだらすぐ昇天して幸福な生活にはいるという教えは、ほかの極端な結論を生みました。すなわち人は生前どんなでたらめな生活をしていても、死ねば天国に行けるのだから、この世では好き勝手なことをすればよいという考え方です。これは悪魔が神に反して考案した恐ろしい教えで、聖書のどこをみても見いだすことができません。神は明らかに、「罪を犯す魂は死ぬ」(エゼキエル書18章20節)と言っておられます。
 しかも神は正義の方ですから、善人を天国へ悪人を地獄へおくるにしても、その前に厳正な審判を行うと教えられています。その審判についてヨハネは「死んでいた者が、大いなる者も小さき者も共に、御座の前に立っているのが見えた。かずかずの書物が開かれたが、…死人はそのしわざに応じ、この書物に書かれていることにしたがって、さばかれた」(ヨハネの黙示録20章12節)と書いています。
 もしも死人がすでに昇天したり地獄におちているのであれば、何をわざわざ天国や地獄から呼びもどしてさばく必要があるでしょう。この意味でも悪魔が始めた霊魂不滅説は神の知恵と公義を無にした愚かな説であることがわかります。


3.聖書にあらわれた古代の心霊術

(1)口寄せの女に尋ねたサウル王
 心霊術は古くから世界の各地で行われており、とくに未開時代の主要な迷信のひとつでした。神がモーセに命じて聖書をお書かせになったころも相当盛んであったらしく、神はこれをきびしく戒めておられます。それにもかかわらずその影響はイスラエル民族の間にも及び、ついには指導者である王までがこの道に頼るようになりました。
 あるときペリシテびとがイスラエルと戦うために軍を集めました。これを見たサウル王は恐れを感じて神に伺いをたてましたが、神は全然お答えになりません。なぜならば王はかつて神の命令にそむいたので、神に見すてられていたからです。そこで思案に余った王は「わたしのために、口寄せの女を捜し出しなさい。わたしは行ってその女に尋ねよう」としもベたちに言いました。しもベたちがひとりの女の口寄せがエンドルにいることをしらせたので、王は変装をし、ふたりの従者を伴って夜の間に女の所に行きました。そして、「わたしのために口寄せの術を行って、…サムエルを呼び起してください」とたのみました。サムエルは生前、天の神に忠実につかえた預言者でしたから、王は彼をとおして神の指示をいただけるかと考えたのです。
 やがて霊媒である女がサムエルを見て、「神のようなかたが地からのぼられるのが見えます。…ひとりの老人がのぼってこられます」と言うと、サウルはその人がサムエルであるのに気づいて、地にひれ伏して拝しました。それから次のような問答が王とサムエルの霊との間にかわされました。
 サム工ル「なぜ、わたしを呼び起して、わたしを煩わすのか。」
 サウル「わたしは、ひじように悩んでいます。ペリシテびとがわたしに向かっていくさを起し、神はわたしを離れて、預言者によっても、夢によっても、もはやわたしに答えられないのです。それで、わたしのすべきことを知るためにあなたを呼びました。」
 サム工ル「主があなたを離れて、あなたの敵となられたのに、どうしてあなたはわたしに問うのですか。主は、わたしによって語られたとおりにあなたに行われた。…あなたは主の声に聞き従わ…なかったゆえに、主はこの事を、この日、あなたに行われたのである。主はまたイスラエルをも、あなたと共に、ペリシテびとの手に渡されるであろう。あすは、あなたもあなたの子らもわたしと一緒になるであろう」(サムエル記上28章1―19節参照)
 この出来事は一見、死人の霊と交通できるもののように思わせますが、気をつけて読めば下の理由により、サウルが悪魔に惑わされたことがわかります。
 第一、神はすでにサウルに答えるのを中止されたのですから、わざわざ死んだサムエルを煩わしてお答えになるはずがありません。
 第二、もしもこれが実際にサムエルの霊であったならば、神だけがお受けになるはずの礼拝を、信仰のあついサムエルがサウルから受けるはずはありません(黙示録19章10節参照)
 第三、死人の霊が出て来て話をするということは、聖書に教えてある死後の状態と一致しません。
 第四、「あすは、あなたもあなたの子らもわたしと一緒になるであろう」(サムエルのように死ぬであろうの意)とのサウルとその子らの死の予告は実現しませんでした。彼らが実際に殺されたのは数日後のことであり、しかも王と共に死んだのは3人の子らだけで(サムエル記上31章2節参照)残りはよほど後に殺されましたから(サムエル記下2章8―10節参照)、口寄せの言葉は事実に反しています。

(2)心霊術についての神の警告
 聖書には死者との交通について次のような警告が与えられています。
 「魔法使の女は、これを生かしておいてはならない」(出エジプト記22章18節)
 「あなたがたは口寄せ、または占い師のもとにおもむいてはならない。彼らに問うて汚されてはならない。」「男または女で、口寄せ、または占いをする者は、必ず殺されなければならない」(レビ記19章31節、20章27節)
 「あなたの神、主が賜わる地にはいったならば、その国々の民の憎むべき事を習いおこなってはならない。…占いをする者、卜者、易者、魔法使、呪文を唱える者、口寄せ、かんなぎ、死人に問うことをする者があってはならない。主はすべてこれらの事をする者を憎まれるからである。」(申命記18章9-12節)
 「人々があなたがたにむかって『さえずるように、ささやくように語る巫子および魔術者に求めよ』という時、民は自分たちの神に求むべきではないか。生ける者のために死んだ者に求めるであろうか」(イザヤ書8章19節)
 「魔法使」「口寄せ」「占い師」「卜者」「易者」「呪文を唱える者」「かんなぎ」「巫子」などとあるのは、すべて死人に問うことをする人々のことで、その呼び名が異なるように、心霊術の形態も数限りなくあることがうかがわれます。
 心霊術をとおして行われることや、語られることには恐ろしい歎きがかくされています。神は「これを生かしておいてはならない」と言われるほどおきらいになるのです。


4.近代心霊術の復興

 近代心霊術のおこりは、ヨーロッパです。ドイツやスイスあたりで霊との交信がみられましたが、まもなく大陸全体にひろがり、英国にもわたり、1847年ごろには、一般の関心を集めるようになりました。
 ちょうどそのころ米国では、ニューヨーク州のハイデスビルに住むフォックス家で不思議なことが起こっていました。1848年3月31日のことです。フォックス夫妻と娘のマーガレッタとケティの4人は、新しい家を建築中だったので、仮小屋で生活していました。その晩彼らは不思議な音で目をさましました。それは戸をたたく音でした。12才になるケティが「幽霊さん、私のするようにしてごらん」といって手をたたくと、それに対して応答がありました。次にケティは指を何本か出して、「この指の数をいってごらん」というとその通り合図をしました。15才のマーガレッタは「この霊は私たちのことを聞いているばかりでなく、見ているのだわ」といって、「今度は4まで数えてちょうだい」というと、その音は正しく4まで数えました。フォックス夫人がその音に自分の子供の数とその年令をたずねると、これにも正しく答えたのです。
 このようにして交信の方法がわかり、この音は、そこで殺されて、死体を地下に埋められた行商人の霊で、自分が殺されたことや、彼の霊はなお生きていることを人々に伝えるために霊媒を求めているといわれました。
 はじめ一般の人々は、これは何かのトリックで、すぐ消えてしまうだろうと思いましたが、6年という短い期間に心霊術は全米にひろがったのです。そして、1894年には、全世界で6000万の信者がいるというほどになりました。


5.終末の前兆としての心霊術

 キリストは終末時代に「にせキリストたちや、にせ預言者たちが起って、大いなるしるしと奇跡とを行い、できれば、選民をも惑わそうとするであろう」(マタイによる福音書24章24節)と予告なさいました。サタンは「光の天使に擬装する」(コリント人への第2の手紙11章14節)ことができます。彼はまた「人々の前で火を天から地に降らせることさえ」(ヨハネの黙示録13章13節)すると言われています。
 聖書は「後の時になると、ある人々は、惑わす霊と悪霊の教とに気をとられて、信仰から離れ去るであろう」(テモテへの第1の手紙4章1節)と預言しています。今日、心霊術の働きは全世界にひろまっています。悪魔の欺きにおちいらないようにするために聖書は「愛する者たちよ。すべての霊を信じることはしないで、それらの霊が神から出たものであるかどうか、ためしてみなさい」(ヨハネの第1の手紙4章1節)とすすめています。
 またイザヤ書8章20節には「おしえとあかしに尋ねなければならない。もし、このことばに従って語らなければ、その人には夜明けがない」(新改訳)といっています。「おしえとあかし」というのは聖書全体のことです。どんな不思議なことをしても、もし聖書にてらしてみて、ちがっていれば、それは神よりでたものではありません。悪魔に欺かれないようにするためには聖書をよく研究することが大切です。




第21課 復習問題


※問題をクリックすると解答が開きます。

答え: (1)神の愛を疑わせる、(2)欺く事、(3)善悪のけじめをあいまいにする

答え: 心霊術を通して行われることや、語られることには恐ろしい欺きが隠されている

答え: 「にせキリストたちや、にせ預言者たちが起こって、大いなるしるしと奇跡とを行い、できれば選民をも惑わそうとする」

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